My First Visit to the Red Cliff
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壬戌の年の秋、七月の十六夜の日、
私(蘇軾)は客と舟を泛べて赤壁の下に遊ぶ。
涼風は静かに吹き、川波一つ立たぬ。
酒盃をあげて客に勧め、「明月」の詩を吟じ、「窈窕」の一節を詠う。
やがて、月が東の山の端から昇り、北斗と牽牛の間をたゆたう。
純白の水玉が大江一面に広がり、水の輝きは彼方の空へとつながる。
葦一葉のごとき舟の進むに任せ、川のおもての果てしなき広がりを切ってゆく。
その洋々としたさまは、あたかも虚空をふみ風にまたがり、とどまる所を知らぬが如く、
その飄々としたさまは、宛ら俗世を忘れてただ一人立ち、羽根が生えて仙界に昇るかのごとくである。
かくして飲酒の楽しさは極まり、舟縁をたたいて謡
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桂の櫂、蘭の槳。溯るは光降る流れ。はるかにもはるかなる我がおもい、天の彼方に佳き人を偲ぶ。
洞蕭の巧みな客が、私の歌に合わせて吹く。その音色はおろろと恨むが如く慕うが如く、泣くが如く訴うるが如く、その余韻は嫋嫋として、一筋の糸の如く絶えることなく後を引く。この音には、深い谷間に潜む蛟も舞い、放れ小舟の寡婦も涙するであろう。
私ははっとして、襟を正して坐りなおし、客に問いかける、「なぜこうした気持ちになるのか?」と。
客は言う、「月は明らかに、星はまばらに、烏鵲は南へと飛ぶ。これは、たしか曹孟徳の詩。西の方は夏口を望み、東の方は武昌を望めば... 」
龍石書
* These paragraphs were cited from the ode “My First Visit to the Red Cliff,” was created by Su Shi (pen name “Dongpo,” a scholar and demoted government official in the Song Dynasty of China). He had made his first trip near Red Cliff with his friends on the 16th of the 7th lunar month of the year Ren Xu (1082). He recalled the Battle of Red Cliff in AD 208 and wrote about his philosophical views upon the rise and fall of great historical figures and the brevity of life.